6/5付け毎日新聞社説

社説:
靖国参拝問題 国益のためにやめる勇気を
 小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題が国内外で再燃している。首相は個人的信条の問題なので「他の国が干渉すべきでない」と参拝の姿勢を変えていない。一方で、私的信念を貫こうとするために、国益や国際協調の枠組みを損ないかねないという現実政治に直面している。

 私たちはこれまで、A級戦犯が合祀(ごうし)されている神社に首相としての参拝は行うべきでないという主張をしてきた。

 靖国問題をめぐっては、政界でも動きがでてきた。3日、中曽根康弘元首相が講演で「信念を貫くことも立派だが、国家全体の利益にどういう作用を及ぼしているかを考えるのも大事な点だ」と述べ、小泉首相に「勇気ある」参拝中止の決断を促した。

 中曽根氏は戦後40年を期して、85年の終戦記念日に初めて公式参拝した首相だが、翌年「間違いだった」と言って取りやめている。参拝の難しさを身にしみて感じている先輩首相が「やめる勇気を」と忠告する言葉を小泉首相はどう受け止めたのだろうか。

 河野洋平衆院議長も、歴代首相を集めて靖国問題を話し合い「慎重のうえにも慎重な対応が必要」との認識で一致した。自身の誕生日に1回だけ参拝し、その後周辺諸国の反発で中止した橋本龍太郎氏のほか、宮沢喜一、森喜朗氏らが顔をそろえた。

 公明党の神崎武法代表は「自粛を求める。連立の基盤に悪い影響があるだろう」と語った。

 衆院予算委の集中審議では、以前「総理大臣として行く」と言明していた小泉首相自身も「首相の職務としての参拝ではない」とトーンダウンし、A級戦犯については「戦争犯罪人とした(東京裁判を)日本は受諾している」などの認識を答弁している。しかし「心の問題は自分自身で考える問題だ」と中止要請ははねつけている。

 首相は参拝理由を「心ならずも戦争に駆り出された」戦没者に敬意と感謝の意をささげるためと言う。この点は理解できる。しかし、神社には戦争を指導した責任者の霊も一緒にまつられている。この矛盾について、迷惑をこうむった国民にも近隣諸国にもどう説明するのか、小泉首相はいまだに答えていない。「こころ」の問題を持ち出し自己完結する態度は説明責任放棄に等しく、説得力をもたないのではないか。

 戦後60年の総決算として、わが国が優先すべき「国益」の一つに国連安保理常任理事国入りがある。敗戦後、平和国家の道を歩んできた日本が常任理事国に入ることは、戦勝国による国際秩序から新しい国連へと移り変わるギアチェンジになるからだ。そのカギを握る周辺諸国との関係がギクシャクするのは、国益に何のプラスにもならない。

 小泉首相もわかっているはずなのに、意地を張り通すのは首相として思慮に欠けると言わざるを得ない。己の信条を殺してでも国益を優先させた元首相たちの重い決断を、小泉首相もかみしめるときが来ている。

毎日新聞 2005年6月5日 1時10分
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by rjw.tunetune | 2005-06-05 09:50 | 日記
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