6/3付け朝日新聞社説

靖国参拝 重鎮たちからの忠告

 近隣国との関係がいかにこじれようとも靖国神社参拝は続ける。小泉首相のかたくなな姿勢に、河野衆院議長と歴代首相が異議の声をあげた。

 「日中、日韓関係の急速な悪化は看過できない。大きな原因のひとつに首相の靖国参拝がある」。そんな河野氏の呼びかけに海部、宮沢、村山、橋本、森の5人の元首相が応じ、「首相の靖国参拝には慎重なうえにも慎重を重ねるべきだ」という意見で一致した。

 立法府の長が行政府の長の経験者を集め、現職の首相に注文を付ける。三権分立のなかでは極めて異例の出来事だ。河野氏や歴代首相の危機感がそれだけ強いということだろう。

 自民党内ではこれまで、首相の靖国参拝を擁護する声ばかりが目立ってきた。

 安倍幹事長代理は「首相が靖国神社をお参りするのは当然で、責務だ。次の首相も、その次の首相も行っていただきたい」と述べた。

 厚生労働政務官の「東京裁判は一方的な裁判だ。A級戦犯は日本国内ではもう罪人ではない」という問題発言も飛び出した。

 中国ではデモや投石など反日の動きが続いた。呉儀副首相が小泉首相との会談を直前にキャンセルした。そんな中国に一方的に譲歩する必要があるのか。勇ましい主張には若手議員を中心に賛同者が少なくない。

 首相が参拝を続ける姿勢を崩さず、「他の国が干渉すべきではない」などと言い続けることが、党内にそうした気分を広げる一因となってきた。

 その一方で、首相の参拝に反対する声は党内にほとんどあがらなかった。

 中国との付き合いに熱心だったかつての橋本派や宮沢派が衰退し、分裂したことの影響もあったろう。党の幹部たちには「小泉さんはどうせ持論は曲げない」という思いもあった。

 そんななかで、河野氏らが首相に異議を唱えたことの意味は大きい。この十数年の日本の政治と外交の責任を担ってきた人びとである。

 旧社会党の村山氏は戦後50年の節目で植民地支配と侵略にけじめをつけようと、反省とおわびの「談話」を出した。かつて日本遺族会の会長でもあった橋本氏は、一度は靖国神社を参拝しながら中国などの反発で中止した過去を持つ。森氏は小泉首相の後見人を自任する。

 それぞれの信条は別にして、日本の国益が損なわれているという共通の思いが6人を突き動かしたに違いない。

 河野氏の集まりには加わらなかった中曽根元首相も、講演で「個人的信条より

 国家利益を考えてやめるべきだ」と首相に参拝中止を求めた。

 中曽根氏はこうも言った。「やめる方が勇気を要するが、勇気のあることをするのが政治家だ」

 首相は「適切に判断する」と繰り返すばかりではなく、重鎮たちの忠告を重く受け止める必要がある。
[PR]
by rjw.tunetune | 2005-06-05 09:45 | 日記
<< 6/3付け産経新聞社説 6月5日付け朝日新聞社説 >>