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4/7日経新聞社社説

社説2 混乱を広げた教科書検定(4/7)
 来春から中学校で使用される教科書の検定結果が発表された。「ゆとり教育」への移行を控えた4年前の前回検定に比べ、学習指導要領の上限を超えた「発展的内容」を大幅に取り込んだ教科書が多く、ページ数も数学や理科を中心に増えた。

 学力低下批判を受けて中山文部科学相が学習指導要領の全面的な見直しを打ち出した結果、扱われていなかった数学の二次方程式の公式や元素の周期表などが復活。国際評価などで明らかになった学力低下から底上げを目指す内容になっている。

 指導要領を超えた記述を大幅に規制してきたこれまでの検定を改め、質と量で厚みのある教科書になったことは評価していい。ただし、削減された授業時間のもとでこうした教科内容を消化することが難しいのに加えて、目まぐるしい政策の転換で学校現場に広がる混乱は大きい。

 これらは学習指導要領などに一律に事細かな制限規定を設け、現場の裁量や社会の要求を受け入れてこなかった国の教育行政の仕組みに負う部分が多い。指導要領や教科書検定制度を弾力化して、教育内容に自由な裁量部分を広げる必要がある。

 今回の検定では一部の教科書の歴史記述を巡って中国や韓国の反発が繰り返されたが、これも国による教科書検定という仕組みが対外的混乱を広げている部分が少なくない。

 日本の教科書検定制度は民間で編集されたさまざまな教科書を国が「全国的な教育水準の維持」「適正な教育内容」などの観点から審査し、修正を求めて発行するものだが、この関与を近隣諸国があたかも「国定教科書」のように誤解してとらえて反発を強める構造は今回も同様だ。

 欧米など主要国では民間で発行された教科書を自治体や学校が自由に採択する場合が多く、国定教科書が中心の中国や韓国は例外的だ。

 民間が発行する教科書がその国の国際関係や歴史認識に基づいて多様な表現を伴うのは民主主義の下では当然だろう。記述の客観性など、教科書が教材としての適正な基準を満たしているかどうかを判断する仕組みに国が直接関与して修正を指示することが、なお必要なのか。対外的な摩擦を広げる一因にもなっている検定制度の現状を問い直したい。
by rjw.tunetune | 2005-04-09 09:30 | 日記
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