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4/6毎日新聞の社説

社説:
教科書検定 薄める工夫を
 来春から使われる中学校教科書の検定結果が、公表された。韓国、中国から「歴史をわい曲している」などの批判を浴びた扶桑社版の歴史教科書に対しては、文部科学省の教科用図書検定調査審議会から124件の検定意見が付けられた。執筆者側はすべて修正に応じ、合格した。

 扶桑社版で問題になったのは、近現代史における日本の行動を正当化する記述が目立つ一方、植民地支配での加害行為や負の側面には、ほとんど触れていない点などだ。例えば「朝鮮半島では日本式の姓名を名乗ることを認める創氏改名が行われ、朝鮮人を日本人化する政策が進められていた……」とあるのに対し、検定意見は「戦時下の植民地の実態などについて誤解するおそれのある表現」と指摘した。執筆者側は、「日本式の姓名を名乗らせる創氏改名」としたほか、「現地の人々にさまざまな犠牲や苦しみをしいることになった」との表現を加えた。

 全体を通して独善的な記述は減ったが、「反自虐史観」の基本姿勢は今回も貫かれており、なお不信を抱く向きもあるだろう。

 それにしても歴史のように認識に大きな開きのある分野の検定は難しい。検定意見は正しいのか、意見を付けなかった個所はそれでいいのか、議論は果てしのないものになる。近隣諸国との歴史的関係を考えれば余計複雑だ。ただ、日本の教科書は国定ではないから、記述内容すべてが国の見解というわけではない。後は教科書を使う側の判断、採択の問題になる。両国には改めてその点に理解を求めていくほかはない。

 問題なのは国定教科書ではないとはいえ、相当程度国が関与していることだ。検定は、文科省の検定基準に基づき、学説状況や政府見解に照らして検定審の議を経て行われる。過去、政府の見解に反する記述は厳しくチェックされてきた。その方針は社会の公民的分野などで今回も踏襲されている。

 渦中の竹島について、「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している」(扶桑社)との説明に、「領有権について誤解するおそれのある表現」との意見が付き、「わが国固有の領土であるが、韓国が不法占拠している」との記述に改められた。また自衛隊のイラク派遣についても「戦後初めて戦地であるイラクに」(日本書籍新社)は、「イラクの中の『非戦闘地域』に」になった。

 意見自体は間違っていない。だがこんな例が続くと、教科書には政府の考え方がすべて反映されており、国定と事実上変わらないとの受け止め方をされてしまいかねない。過去の検定が、社会情勢に翻弄(ほんろう)され、時に恣意(しい)的で、不透明なものに流れたことも事実だ。

 この隘路(あいろ)を抜け出すには、国の関与を薄めるしかない。検定をやめ、自由発行制にするのが望ましいが、国とは別の専門家らによる第三者機関を設立し、そこが適当と認定した教科書のみ、採択リストに載せるという認定方式も考えられる。成熟した欧米諸国の多くは、検定制度を採っていない。
by rjw.tunetune | 2005-04-09 09:28 | 日記
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