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朝日VS産経バトル

asahi.com :朝日新聞今日の朝刊-社説
4/6付け朝日社説
「つくる会」 こんな教科書でいいのか

 中学生が来年度から使う教科書の検定が終わった。「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した歴史と公民の教科書も修正をしたうえで、合格した。

 「つくる会」の教科書が初めて登場したのは4年前の検定だった。今回は2度目の検定にあたる。

 歴史教科書では、日本武尊(やまとたけるのみこと)の神話に2ページを割いていたが、今回はなくなった。特攻隊員の遺書も消えた。全文を載せていた教育勅語も一部の要約になった。

 しかし、天皇の重視は変わらない。実在するかどうかわからない神武天皇の東征が1ページも書かれている。

 何よりも問題なのは、光と影のある近現代史を日本に都合よく見ようとする歴史観が貫かれていることだ。

 今回、「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」「日本を解放軍としてむかえたインドネシアの人々」という囲み記事が新たに登場した。日本が占領した地域の代表者らを集めた「大東亜会議」もくわしく説明している。

 一方で、中国への侵略、朝鮮半島の植民地支配については後ろ向きだ。沖縄戦についても、ひめゆり部隊や集団自決などの悲劇には一言も触れていない。

 検定で修正されたものの、当初、満州国は関東軍だけでなく「現地人政治家」も加わって建国された、となっていた。韓国併合についても、一部に併合を受け入れる声もあった、と書かれていた。検定意見を受けて修正された個所は、近代以降の近隣諸国との関係を中心に、124カ所にのぼった。

 「つくる会」の会報は今回の歴史教科書の申請本について「旧敵国のプロパガンダから全く自由に書かれている教科書」と自賛している。しかし、アジアの人々に強いた犠牲を「プロパガンダ(宣伝)」で片づけることはできない。

 日本を大切に思うなら、他国の人が自分の国を大切にする心にも敬意を抱くべきだ。そうであってこそ、周りの国と互いに理解を深めることができる。

 「つくる会」の歴史教科書は、そのバランスを欠いている。4年前、朝日新聞は社説で、教室で使うにはふさわしくないと主張した。今回も同じことを言わざるをえない。

 検定についても指摘しておきたい。

 竹島について、「つくる会」の公民教科書は当初、「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している」と書いていた。それが検定の結果、「韓国が不法占拠している」に修正された。

 政府見解の通りにしなければ合格しないからだが、検定でそこまで求める必要があるのだろうか。これでは、国定教科書と差がなくなる。

 「検閲」ではなく、事実や通説との違いを直す役割に徹する。検定は、本来そうしたものであるべきだ。

 重要なのは、どの教科書で学ぶかである。保護者や教師も目を凝らし、国際社会を生きる子どもにふさわしい教科書をそれぞれの地域で選んでほしい。


4/7産経新聞の社説

■【主張】教科書問題 驚かされた朝日新聞社説

 朝日新聞の六日付社説「こんな教科書でいいのか」を読んで、驚かされた。これでは、特定の教科書を排除し、自由な言論を封殺するものといえる。

 その朝日新聞社説は、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の歴史・公民教科書だけを取り上げ、「光と影のある近現代史を日本に都合よく見ようとする歴史観が貫かれている」「中国への侵略、朝鮮半島の植民地支配については後ろ向きだ」「バランスを欠いている」などと批判している。

 今回、検定合格した中学社会科教科書は、扶桑社の教科書だけではない。全部で八社である。これから八月末まで五カ月間、全国の教育委員会で、教科書を選定するための採択に向けた作業が行われる。その時期に、一社だけを狙い撃ちするような社説は、教育委員に不必要な予断を与えかねない。

 朝日新聞は四年前の前回採択でも、扶桑社を集中攻撃した。平成十三年四月四日付社説「やはり、ふさわしくない」で、「戦争を日本に都合よく見ようとする偏狭さ」「戦前の国定教科書と見まがうほどだ」などと批判し、六月二十八日付社説「過去と対話する歴史を」でも、「私たちは、この教科書は教室で使うには、ふさわしくないと考えます」と扶桑社教科書の不採択運動を助長した。

 新しい歴史教科書をつくる会は、中学教科書に「従軍慰安婦」など極端に自虐的な記述が増えた平成八年、次代の日本を担う子供たちに正しい歴史を伝えようと集まった人たちだ。そのメンバーが執筆陣に加わった教科書を、快く思わないからといって、それだけを排除しようとする朝日新聞の態度こそ偏狭ではないか。

 検定合格した八社の教科書には、朝日新聞の論調に近い教科書もあれば、そうでない教科書もある。いろんな教科書があっていいし、また、そうあるべきだ。それらを教育委員らが読み比べ、子供たちに最も良いと思われる教科書を選ぶのが採択である。

 そのためには、外国の圧力や国内の特定政治勢力の妨害に左右されない静かな環境が必要である。すでに、中国と韓国が朝日新聞に同調し、扶桑社非難を始めている。両国の内政干渉こそ、排除されるべきである。

4/8朝日新聞社説
産経社説 こちらこそ驚いた

 7日の産経新聞は「驚かされた朝日新聞社説」と題して、教科書問題の主張を掲げた。しかし、それを読んで、私たちの方こそ驚かされたというのが、率直な感想である。

 産経社説は、こう主張している。

 「(6日の)朝日新聞社説は、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーらが執筆した扶桑社の歴史・公民教科書だけを取り上げ、……『バランスを欠いている』などと批判している」「1社だけを狙い撃ちするような社説は、教育委員に不必要な予断を与えかねない」

 朝日新聞はこれまで「検定はできるだけ控えめにすべきだ」「教科書は多様な方がよい」と主張してきた。その考えはいまも変わらない。

 それでも、「つくる会」の歴史教科書を取り上げて批判したのは、やはり教室で使うにはふさわしくない、と考えざるをえなかったからだ。

 戦後の日本は、戦争や植民地支配でアジアと日本の民衆に大きな犠牲を強いたことを反省して出発したはずである。過去にきちんと向き合い、そのうえで周りの国々と未来を志向した関係を築いていく。それが日本のあるべき姿だろう。

 「つくる会」の教科書は、子どもたちが日本に誇りを持てるようにしたいと願う余りだろうが、歴史の光の面を強調しすぎて、影の面をおざなりにしている。その落差が他社の教科書に比べて際立ち、バランスを欠いているのだ。

 だれでも自分の国を大切に思う気持ちに変わりはない。しかし、同時に他国の人たちに十分目配りをしなくてはならない。そうでなければ、正しい歴史を次の世代に伝えることにはならない。私たちが批判したのはそのことである。

 産経新聞が「つくる会」の教科書を後押ししたい気持ちはよく分かる。発行元の扶桑社は、産経新聞と同じフジサンケイグループに属しているのだ。

 それどころか、産経新聞は98年1月の社説で「新聞社が教科書づくりにかかわるのは初めての挑戦であるが、『つくる会』ともども、読者および国民の支援を仰ぎ、また批判も受けたい」と書いていた。「つくる会」が教科書づくりを始めたころのことだ。

 自らがかかわっている教科書を自社の紙面で宣伝してきたと言われても仕方あるまい。

 もう一つ驚いたのは、扶桑社の営業担当者が検定中の申請本を各地の教員らに渡していたことだ。同社は3度にわたり文部科学省から回収などを指導された。この事実が国会で明らかになった。

 産経新聞はこれまで、「つくる会」の申請本の内容が外部に流れて報道されたり、批判されたりするたびに、「検定作業にあたる教科書調査官に先入観を抱かせる」「書かないのがマスコミの良識」などと批判していた。

 ほかならぬ扶桑社が流出させていたことについて、産経新聞はどう考えるのだろうか。
by rjw.tunetune | 2005-04-09 08:15 | 歴史
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